「話し言葉」の最も重要な特徴は、声を使うところにあるのではなく、聞き手が目の前にいるというところにあります。話し手と聞き手は、親しい関係の場合もあれば、初対面の人、行きずりの人の場合もありますが、少なくとも両者は、そこがどんな場所で、どんな状況であるかについて、一定の共通認識を持っています。同時に、相手がどういう人であるかについても、ある程度はわかります。
(中略)
ところが「書き言葉」になると、たとえ親しい相手への手紙でも、あちこちで説明が必要になります。自分しか読まないはずの覚え書きでも、時間がたつと書かれた状況がわからなくなりますから、「あとで読み返すかもしれない自分」への最低限の配慮はしておかなくてはなりません。説明するというのは、「自分には言葉にしなくてもわかっていること」を、わざわざ言葉にする作業ですから、とてもやっかいです。でも、そこがきちんとできていないと、
誤解が生じて取り返しのつかない結果になることもありえます。面とむかって(注5)の話なら、
相手が気を悪くすれば急いで謝ることもできますが、手紙だと、怒らせたことに気づかないまま関係が切れる恐れすらあるのです。
ですから、「書き言葉」においては、文字の読み書きという知識に加えて、自分が書いたものを読む相手がどんな情報を必要としているかを推測する力、そして、その情報を、どんな言い方、どんな順序で提供すれば、わかってもらいやすく、誤解が生じにくいかを考える力が、いかに大きな意味を持つかが分かっていただけると思います。
(脇明子『読む力が未来をひらくー小学生への読書支援』による)
行きずりの人:たまたま出会った人
1.
話し手と聞き手が声を使って情報を共有するところ
2.
話し手と聞き手の関係が多様であるところ
3.
話し手が聞き手との親しさによって表現を使い分けるところ
4.
話し手が聞き手と場面を共有するところ
誤解が生じてとあるが、どのような時に誤解が生じるのか。
1.
読み手に必要な情報を十分に説明していない時
2.
読み手が理解していることを再び説明してしまった時
3.
自分のために書いたものを相手に送ってしまった時
4.
気を悪くした相手にきちんと謝らなかった時
「書き言葉」について、筆者の考えに合うのはどれか。
1.
相手がどのような情報を必要としているのかを調べることが大切だ。
2.
何をどのように書けば相手が理解できるかを考えることが大切だ。
3.
言い方や順序よりも文字と言葉の正確さを優先させたほうがいい。
4.
読み書きの知識よりも書く内容を重視したほうがいい。