JLPT N1 – Reading Exercise 124

#351

わたしたちは、日々ひび大量たいりょう情報じょうほう処理しょりしなければならない現代げんだいにおいて、ほんもまた、「できるだけはやく、たくさんまなければいけない」という一種いっしゅ強迫観念きょうはくかんねんにとらわれている。「速読そくどくコンプレックス」とえてもいいかもしれない。しかも、らくをしてそれができるのであれば、うことはない。ちまたあふれかえっている速読法そくどくほうほんは、そうした心理しんりたくみにつけこむようにかれている。 もちろん、とき場合ばあいによっては、はやむことも必要ひつようだろう。「明日あしたまでに大量たいりょう資料しりょうんで書類しょるいつくらなければいけない」といった状況下じょうきょうかでは、速読そくどくななみはけられないだろう。しかしそれは、たん一時的いちじてき情報じょうほう処理しょりであり、かれた内容ないよう十分じゅうぶん理解りかいし、その知識ちしきを、自分じぶん財産ざいさんとしてにつけるための読書どくしょではない。たんに、情報じょうほううずなか否応いやおうなくまれてしまっているだけで、自分じぶん人生じんせいを、今日きょうのこの瞬間しゅんかんまでよりも、さらにゆたかで、個性的こせいてきなものにするための読書どくしょではないのである。 読書どくしょたのしむ秘訣ひけつは、なによりも、「速読そくどくコンプレックス」から解放かいほうされることである!ほんはやまなければならない理由りゆうなにもない。はやもうとおもえば、はやめるような内容ないよううすほんへと自然しぜんびがちである。その反対はんたいに、ゆっくりむことをこころがけていれば、時間じかんをかけるにふさわしい、手応てごたえのあるほんこのむようになるだろう。 (平野ひらの啓一郎けいいちろうほんかたスロー・リーディングの実践じっせん』による) 強迫観念きょうはくかんねんにとらわれている:ここでは、つよおもいからげられない ~にたくみにつけこむ:ここでは、~をうまく利用りようする ななみ:ざっとむこと

Vocabulary (34)
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1
そうした心理とあるが、どのような心理か。
1. 本をたくさん読めるようになりたい
2. 大した努力なしに速読法を身につけたい
3. 「速読コンプレックス」に縛られずに読みたい
4. 内容を理解しなければという思いから解放されたい
2
筆者によると、速読をしなければならないのはどのようなときか。
1. 情報の渦の中に巻き込まれないようにするとき
2. 多くの情報を急いで処理しなければならないとき
3. 多くの知識を自分のものとして蓄えようとするとき
4. 社会の変化の速さに取り残されないようにするとき
3
筆者によると、読書を楽しむにはどうすればよいか。
1. 手応えのある本を繰り返し読む
2. 本の内容に応じて速さを変えて読む
3. 速さにこだわらずできるだけ多くの本を読む
4. 速さや量にこだわらず時間をかけて本を読む