JLPT N1 – Reading Exercise 17

#244

あるほんつぎのようにかれていた。 「このごろの若者わかものらないことのひとつは、とかくちいさくかたまりたがることだ。特定とくてい仲間なかまとだけつきあって、ややこしいことをけたがる。 これには、『他人たにん迷惑めいわくをかけない』という、奇妙きみょう道徳どうとくきわたりすぎているのではないか。『他人たにん迷惑めいわくをかけない人間にんげん』というのを、やたらとちあげることに、ぼくはおおいに不満ふまんなのである元来がんらい人間にんげんりみだれてらすのに、他人たにんにまったく迷惑めいわくをかけてないなんて、とてもしんじられない。むしろ、迷惑めいわくをかけあうことこそ、人間にんげん社会性しゃかいせいえるぐらいだ。それに、社会的しゃかいてき弱者じゃくしゃにとって、この『迷惑めいわくをかけるな』は差別さべつとして作用さようすることがおおい。問題もんだいは、迷惑めいわくをかけていることに鈍感どんかんになるな、ということだろう。」 わたしも「ひと迷惑めいわくをかけてはいけない」とおしえられてきた。じつはこれは、たがいにたすって生活せいかつしているという前提ぜんていがあるからこそえる言葉ことばなのだ。人間関係にんげんかんけい希薄きはく社会しゃかいより感謝かんしゃ気持きもちをちながら迷惑めいわくをかけあえる社会しゃかいのほうが、ずっと居心地いごこちがいい。

Vocabulary (20)
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1
何に対して「おおいに不満なのである」と言っているのか。
1. 若者が特定の仲間とだけつきあって、小さく固まりたがること
2. 他人に迷惑をかけないことがいいことだと思われていること
3. 他人に迷惑をかける人が多いということ
4. 人間が入りみだれて暮らすと、他人に迷惑をかけてしまうこと
2
差別として作用する」例として、最も適当なものはどれか。
1. 電車の中でお年寄りに席を譲らないこと
2. 子供の学力に親の経済力が影響すること
3. 学歴がないと就職しにくいこと
4. 車いすの人は電車に乗らないほうがいいと思うこと
3
人に迷惑をかけてはいけない」はどういう社会におけるものか。
1. 人に迷惑をかけるのは良くないという考え方の社会
2. お互いに迷惑をかけ合うことが普通の社会
3. お互いにあまり関係を持たないようにする社会
4. ややこしいことはなるべく避けようとする社会