JLPT N1 – Reading Exercise 10

#237

妻つまの掃除そうじと整理せいりの仕方しかた、これはもう極端きょくたんに偏執的へんしゅうてきである。たとえば自分じぶんの好すきなところはピカピカ光ひかるほど磨みがき上あげるが、興味きょうみのないところは何年なんねんもほこりが積つみ放ぱなしになっている。家いえの中なかのある部分ぶぶんは精神質せいしんしつなくらい整然せいぜんと物ものが並ならび、だれかが彼女かのじょの留守るすにほんの一ミリほど品物しなものを動うごかしてもすぐに気きづいてしまう。そのかわり、いつも手てのつけようもないほどむちゃくちゃにものが突つっ込こんであるところが家いえの中なかに一いち、二にヶ所しょは必かならずある。妻つまのもののしまい方かたは普通ふつうの世間並せけんなみとは大分だいぶちがう。普通ふつうの人ひとなら大概たいがいたんすにしまう品しなが食器棚しょっきだなに入はいっていたり、流ながしの棚たなにあるはずのものが冷蔵庫れいぞうこにしまってあったりする。探さがす以上いじょう一応いちおう我々われわれの常識じょうしきと因襲いんしゅうを全部ぜんぶ脱ぬぎ棄すてて、白紙はくしにかえって探さがさねばならぬが、そんなことは容易よういにできることではない。次つぎに、彼女かのじょの物ものの置おき方かた、並ならべ方かたはことごとく彼女かのじょの抱いだいている美びの法則ほうそくによって支配しはいされているので、実用上じつようじょうの便宜べんぎというものは_______　。どんな不便ふべんを忍しのんでも彼女かのじょは自分じぶんの美びを守まもり通とおそうとする。ときにわたしが抗議こうぎを申もうし込こんでみてもとうていむだである。