これはビジネス文書に限ったことではないのだが、何であれ文書を書いていると、少しばかり緊張感を覚えるものだ。書きながら、頭の中でこんなことを考えている。
この書き方でいいのかな。
これ、ひどく下手な書き方じゃないだろうか。
これでわかるかな。
そういう気がしきりに(注1)して、ちょっとしたプレッシャーになっている。だからこそ、文章を書くのは苦手だ、と思っている人もいるのじゃないだろうか。
しかし、その逆もまた真である。文章を書く面白さとは、そういうプレッシャーを感じながら、なんとか諸問題をクリアして、一応のものを書き上げることにあるのだ。
テレビゲームが楽しいのと同じ理屈(りくつ)(注2)である。あれは、攻略(こうりゃく)する(注3)のが簡単ではない様々な障害をかわしながら(注4)、次々に問題を解決していって、なんとかクリアしていくところが面白いのである。むずかしいからこそ、うまくやったときに楽しいのだ。
文章を書くのも、(1)そういうことである。これでいいのかな、と一抹いちまつの(注5)不安を抱えながら、なんとか書いていくってことを楽しまなければならない。
別の言い方にすると、文章というものは、書く人に対して、うまく書いてくれ、と要求してくるのである。なぜなら、文章とは人と人とのコミュニケーションの道具だからだ。この例外は、自分だけにわかればいいメモと、絶対に他人に見せない日記だけである。
それ以外の文章は、必ず、書く人間のほかに、(2)読む人間がいて完成されるのだ。そして、書いた人の伝えたかったことが、読んだ人にちゃんとわかってこそ、文章は役をはたしたことになる。
(清水義範『スラスラ書ける!ビジネス文書』による)
(注1) しきりに:何度も
(注2) 理屈:ここでは、考え方
(注3) 攻略(こうりゃく)する:うまく解決する
(注4) かわしながら:避けながら
(注5) 一抹の:ほんの少しの
筆者は、文章を書くときに何がプレッシャーになっていると述べているか。
1.
このまま最後まで書き上げられるか不安だという気持ち
2.
読む人が期待する書き方をしているかという気持ち
3.
自分は字を書くのが下手だから嫌だという気持ち
4.
書きたいことがうまく書けているかという気持ち
1.
様々な障害をクリアしていくことがむずかしい。
2.
プレッシャーを忘れ、いろいろ考えるのが楽しい。
3.
苦労して問題を片付け、課題を仕上げるのが楽しい。
4.
不安を抱えたままでは問題を解決するのがむずかしい。
(2)読む人間がいて完成されるとはどういうことか。
1.
文章の価値を決めるのは読み手の存在だ。
2.
文章が成立するには読み手の存在が必要だ。
3.
文章は人に読まれることでよりよいものになる。
4.
文章は読み手の要求にこたえることでできあがる