調べることと書くことは、もっぱら私のようなジャーナリストにだけ必要とされる能力ではなく、現代社会においては、ほとんどあらゆる知的職業において、一生の問い必要とされる能力である。ジャーナリストであろうと、官僚であろうと、ビジネスマンであろうと、研究職、法律職、教育職などの知的労働者であろうと、大学を出てからつくたいていの職業生活のかなりの部分が、調べることと書くことに費やされるはずである。「1」近代社会は、あらゆる側面において、基本的に文書化されることで組織されているからである。
人を動かし、組織を動かし、社会を動かそうと思うなら、「2」いい文章が書けなければならない。いい文章とは、名文ということではない。うまい文章でなくてもよいが、達意の文章でなければならない。文章を書くということは、何かを伝えたいということである。自分が伝えたいことが、その文章を読む人に伝わらなければ何もならない。何かを伝える文章は、まずロジカルでなければならない。しかし、ロジックには内容(コンテンツ)がともなわなければならない。論より証拠なのである。論を立てるほうは、頭の中の作業ですむが、コンテンツのほうは、どこからか材料を調べて持ってこなければならない。いいコンテンツに必要なのは、材料となるファクトであり、情報である。そこでどうしても調べるという作業が必要になってくる。
(立花隆ほか『二十歳のころ』新潮社による)
「1」近代社会とあるが、筆者はその特徴をどのようにとらえているか。
1.
官僚でも、ビジネスマンでも、研究者でも活躍できる社会
2.
文書が作られ、それに基づいて人や組織が動いている社会
3.
法律職などの知的労働者が作成した文書に従って動いている社会
4.
大学を出てから職業につく人があらゆる場面で必要とされる社会
「2」いい文章とあるが、筆者はそれをどのようなものと考えているか。
1.
調べることと書くことに時間を費やした文章
2.
人々を感動させて社会を動かそうとする文章
3.
自分の伝えたいことが相手に十分伝わる文章
4.
小説家が書くような豊かな内容の文章
1.
論理を組み立てることと、論理を支える情報を調べること
2.
論理とそれを支える証拠を頭の中で組み立て、見つけだすこと
3.
ジャーナリストが持っているような知的能力を身につけること
4.
ジャーナリストだけでなく、あらゆる職業生活について知ること