ストレスは、むやみに避けるものではなく、適当につき合っていくべきものである。そのつき合い方に示唆を与えてくれる動物実験を紹介しよう。
この実験では、2匹のラット(実験用シロネズミ)のしっぽを電線につなげて、そこに電気を流す。ラットは痛いので騒ぐ。ラットにとって、電流は大変なストレッサーだ。
2匹のうち「上司」とよばれるほうは、前脚で、目の前のスイッチを1回押せば電流を切ることができる。しっぽに痛みを感したら、スイッチを押して電気ショックを回避できるのである。もう1匹、「部下」とよばれるほうは、自分で電流を切ることはできない。上司が切ってくれるのをひたすら待つだけである。
この2匹に電流が一定量流された。上司と部下、両ラットがしっぽに受けた電気
ショックの量は全く同じである。それなのに、2匹のラットの胃を調べてみると、上司のほうが部下よりも潰瘍が小さかった。
この結果は、ストレッサーがあっても、自分でコントロールできれば、悪影響は少ないことを意味している。ストレッサーの量よりも、それをコントロールできるかどうかのほうが重要なのだ。しかも、コントロールできるかどうかは、多分に主観で決まる。
たとえば、長い時間働いている人が、それを強いられたものと思えぱ、長時間労働はストレッサーとなる。ストレスを引き起こし、からだと心に深刻な影響が出る。ところが、自分が好き好んで長い時間働いていると思えぱ、長時間労働というストレッサーをコントロールしていることになる。したがって長時間労働はストレスの悪影響を生まない。現実は一つでも、それをどう受け止めるかは当人次第なのである。
(相川充「反常識の対人心理学」による)
1.
電流を流し、ラットがそのストレスからどのように身を守るかを調べる実験
2.
電流を流し、そのストレスが与える影響は条件によりどう違うかを調べる実験
3.
電流を流し、匹のラットのどちらが早く電流を切ることができるかを調べる実験
4.
電流を流し、それが胃の潰瘍を小さくするのにどの程度効果があるかを調べる実験
この実験で「上司」、「部下」とよばれる2匹のラットの役割は、次のうちどれか。
1.
「部下」が「上司」の分の電流も受ける。
2.
「上司」が命令し、「部下」が電流を切る。
3.
「上司」がスイッチを押して、「部下」に電流を流す。
4.
「上司」がスイッチを押して、自分と「部下」の電流を止める。
ラットの実験の結果から、どのようなことが言えるか。
1.
ストレスは、多ければ多いほど悪影響が多い。
2.
ストレスは、他との競争がある場合、悪影響が多い。
3.
ストレスを自分で調整できる場合、悪影響は少ない。
4.
ストレスを他から与えられる場合、悪影響は少ない。
長時間労働によるストレスの悪影響を少なくするには、どうすればいいか。この実験から推測できることは何か。
1.
職場の上司からの指示でも時には断る。
2.
嫌な仕事でも力を抜かないで一生懸命仕事をする。
3.
自分で時間をコントロールしてうまく体を休める。
4.
やりたいという気持ちを持って前向きに仕事をする。