JLPT N1 – Reading Exercise 117

#344

ストレスは、むやみにけるものではなく、適当てきとうにつきっていくべきものである。そのつきかた示唆しさあたえてくれる動物実験どうぶつじっけん紹介しょうかいしよう。 この実験じっけんでは、2ひきのラット(実験用じっけんようシロネズミ)のしっぽを電線でんせんにつなげて、そこに電気でんきながす。ラットはいたいのでさわぐ。ラットにとって、電流でんりゅう大変たいへんなストレッサーだ。 2ひきのうち「上司じょうし」とよばれるほうは、前脚まえあしで、まえのスイッチを1かいせば電流でんりゅうることができる。しっぽにいたみをかんしたら、スイッチをして電気でんきショックを回避かいひできるのである。もう1ひき、「部下ぶか」とよばれるほうは、自分じぶん電流でんりゅうることはできない。上司じょうしってくれるのをひたすらつだけである。 この2ひき電流でんりゅう一定量いっていりょうながされた。上司じょうし部下ぶかりょうラットがしっぽにけた電気でんき ショックのりょうまったおなじである。それなのに、2ひきのラットの調しらべてみると、上司じょうしのほうが部下ぶかよりも潰瘍かいようちいさかった。 この結果けっかは、ストレッサーがあっても、自分じぶんでコントロールできれば、悪影響あくえいきょうすくないことを意味いみしている。ストレッサーのりょうよりも、それをコントロールできるかどうかのほうが重要じゅうようなのだ。しかも、コントロールできるかどうかは、多分たぶん主観しゅかんまる。 たとえば、なが時間じかんはたらいているひとが、それをいられたものとおもえぱ、長時間労働ちょうじかんろうどうはストレッサーとなる。ストレスをこし、からだとこころ深刻しんこく影響えいきょうる。ところが、自分じぶんこのんでなが時間じかんはたらいているとおもえぱ、長時間労働ちょうじかんろうどうというストレッサーをコントロールしていることになる。したがって長時間労働ちょうじかんろうどうはストレスの悪影響あくえいきょうまない。現実げんじつは一つでも、それをどうめるかは当人とうにん次第しだいなのである。 (相川あいかわみつる反常識はんじょうしき対人心理学たいじんしんりがく」による)

Vocabulary (26)
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1
ラットを使ってどのような実験が行われたか。
1. 電流を流し、ラットがそのストレスからどのように身を守るかを調べる実験
2. 電流を流し、そのストレスが与える影響は条件によりどう違うかを調べる実験
3. 電流を流し、匹のラットのどちらが早く電流を切ることができるかを調べる実験
4. 電流を流し、それが胃の潰瘍を小さくするのにどの程度効果があるかを調べる実験
2
この実験で「上司」、「部下」とよばれる2匹のラットの役割は、次のうちどれか。
1. 「部下」が「上司」の分の電流も受ける。
2. 「上司」が命令し、「部下」が電流を切る。
3. 「上司」がスイッチを押して、「部下」に電流を流す。
4. 「上司」がスイッチを押して、自分と「部下」の電流を止める。
3
ラットの実験の結果から、どのようなことが言えるか。
1. ストレスは、多ければ多いほど悪影響が多い。
2. ストレスは、他との競争がある場合、悪影響が多い。
3. ストレスを自分で調整できる場合、悪影響は少ない。
4. ストレスを他から与えられる場合、悪影響は少ない。
4
長時間労働によるストレスの悪影響を少なくするには、どうすればいいか。この実験から推測できることは何か。
1. 職場の上司からの指示でも時には断る。
2. 嫌な仕事でも力を抜かないで一生懸命仕事をする。
3. 自分で時間をコントロールしてうまく体を休める。
4. やりたいという気持ちを持って前向きに仕事をする。