JLPT N1 – Reading Exercise 119

#346

いつの時代じだいも、おやどもに成長せいちょうしてもらいたいとねがっている。社会構造しゃかいこうぞう変動へんどう比較的ひかくてきすくない時代じだいには、おやおぼえている仕事しごとのノウハウや心構こころがまえを、そのままどもにつたえればどもはおやあとぐことができた。かつては、世代せだいわってもつぎ世代せだいがおよそおなじことをすることができるようにするための「(1)世代間せだいかん伝授でんじゅ」がおこなわれてきた。 しかし、再生産さいせいさん(リプロダクション)を主目的しゅもくてきとして伝承でんしょうおこな時代じだいとは、現代げんだい事情じじょうことなる。情報革命じょうほうかくめいかくとした世界的せかいてき社会構造変革しゃかいこうぞうへんかくなみなかで、おやに、うえ世代せだいした世代せだいに、(2)「なに伝承でんしょうしたらよいのか」がわかりにくくなってきている。バブル社会的しゃかいてき倫理規範りんりきはん崩壊ほうかいとそののバブル崩壊ほうかいによる不況ふきょう長期化ちょうきかによって、大人おとなたち自身じしんどもたちにたいして、「つたえるべきこと」や「きたえるべきこと」にかんして自信じしんうしなってきている。 大人おとな確信かくしんって伝授でんじゅ伝承でんしょうすべきものをたない社会しゃかいは、当然とうぜん不安定ふあんていになる。たとえどもたちの世代せだいが、それに反抗はんこうするにしても、そのような伝承でんしょうする意志いしには意味いみがある。によくわれるどもの問題もんだいおおくは、「どもたちになにつたえるべきなのか」について大人おとなたちが確信かくしん共通認識きょうつうにんしきてなくなったことに起因きいんしている。 (斎藤さいとうたかし「「できるひと」はどこがちがうのか」筑摩書房ちくましょぼうによる)

Vocabulary (37)
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1
(1)「世代間の伝授」とあるが、どのような伝授が行われていたか。
1. 親は自分の仕事を自分がやってきたとおりに子どもに教えていた。
2. 親は子どもが成長できるように自分より難しい仕事をさせていた。
3. 親は社会構造の変動に合わせて、子どもに教える仕事の内容を変えていた。
4. 親が仕事のしかたや心構えを直接教えなくても、子どもは同じことができた。
2
(2)「何を伝承したらよいのかがわかりにくくなってきている」のはなぜか。
1. 情報革命により、大人が自信を失うような情報しか得られなくなったため
2. バプルが崩壊し不況が続いて、どのようなものを生産しても売れないため
3. 社会情勢の変化により、正しいと思われていた規範がそうでなくなったため
4. 世界中の情報が簡単に得られるようになり、子どもの興味が親と反対になったため
3
筆者は、最近の子どもの問題の原因は何だと考えているか。
1. 子どもに成長してもらいたいと思う親が少なくなっていること
2. 社会の変化により、大人が子どもに技術を伝える機会がなくなったこと
3. 子どもが反抗するため、大人が何かを伝える気持ちをなくしてしまったこと
4. 大人が子どもに何を伝えたらいいかわかちず、社会が不安定になっていること