いつの時代も、親は子どもに成長してもらいたいと願っている。社会構造の変動が比較的すくない時代には、親が覚えている仕事のノウハウや心構えを、そのまま子どもに伝えれば子どもは親の跡を継ぐことができた。かつては、世代が変わっても次の世代がおよそおなじことをすることができるようにするための「(1)世代間の伝授」が行われてきた。
しかし、再生産(リプロダクション)を主目的として伝承を行い得た時代とは、現代は事情が異なる。情報革命を核とした世界的な社会構造変革の波の中で、親は子に、上の世代は下の世代に、(2)「何を伝承したらよいのか」がわかりにくくなってきている。バブル期の社会的倫理規範の崩壊とその後のバブル崩壊による不況の長期化によって、大人たち自身が子どもたちに対して、「伝えるべきこと」や「鍛えるべきこと」に関して自信を失ってきている。
大人が確信を持って伝授・伝承すべきものを持たない社会は、当然不安定になる。たとえ子どもたちの世代が、それに反抗するにしても、そのような伝承する意志には意味がある。世によく言われる子どもの問題の多くは、「子どもたちに何を伝えるべきなのか」について大人たちが確信や共通認識を持てなくなったことに起因している。
(斎藤孝「「できる人」はどこがちがうのか」筑摩書房による)
(1)「世代間の伝授」とあるが、どのような伝授が行われていたか。
1.
親は自分の仕事を自分がやってきたとおりに子どもに教えていた。
2.
親は子どもが成長できるように自分より難しい仕事をさせていた。
3.
親は社会構造の変動に合わせて、子どもに教える仕事の内容を変えていた。
4.
親が仕事のしかたや心構えを直接教えなくても、子どもは同じことができた。
(2)「何を伝承したらよいのかがわかりにくくなってきている」のはなぜか。
1.
情報革命により、大人が自信を失うような情報しか得られなくなったため
2.
バプルが崩壊し不況が続いて、どのようなものを生産しても売れないため
3.
社会情勢の変化により、正しいと思われていた規範がそうでなくなったため
4.
世界中の情報が簡単に得られるようになり、子どもの興味が親と反対になったため
筆者は、最近の子どもの問題の原因は何だと考えているか。
1.
子どもに成長してもらいたいと思う親が少なくなっていること
2.
社会の変化により、大人が子どもに技術を伝える機会がなくなったこと
3.
子どもが反抗するため、大人が何かを伝える気持ちをなくしてしまったこと
4.
大人が子どもに何を伝えたらいいかわかちず、社会が不安定になっていること