JLPT N1 – Reading Exercise 111

#338

中学生ちゅうがくせい高校生こうこうせいころころ、歴史れきし時間じかん退屈たいくつだった。 (中略ちゅうりゃく) そんなわたし四十歳よんじゅっさいころから歴史れきし興味きょうみはじめた。なにかを調しらべるとそのあたりに知識ちしきしまができ、べつのことを調しらべるとまたべつしまができる。そのうちに孤立こりつしていたはずのふたつのしまはしでつながる。「こういうことだったのか」という「1」おどろきがある一見いっけん関係かんけいのなさそうなふたつのものがむすびつくという意外性いがいせいは、自然科学しぜんかがくにおける醍醐味だいごみもっとたるものでもある。歴史れきし調しらべれば調しらべるほど島々しまじまがネットワークのようにむすばれてく。人間にんげん情報じょうほう地球上ちきゅうじょう移動いどうするから当然とうぜんなのだが、ネットワークの構築こうちくはなぜかのうにすこぶる心地ここちよい。そのうえあらゆる現象げんしょう人間にんげんからんでいて余計よけい面白おもしろい。「2」歴史れきしとは地球ちきゅう舞台ぶたいとした途方とほうもなく壮大そうだい演劇えんげきなのだ。自分じぶん先祖せんぞ舞台ぶたいすみすみすみ参加さんかしている。それに人間にんげん本質ほんしつわらないから、ひと状況じょうきょうたヘマを何度なんど繰返くりかえす。だから現在げんざいかんがえるのにじつ役立やくだつ。 わかころにこの面白おもしろさに気付きづいていれば、いまちが記憶力きおくりょくもよかったから強大きょうだいかつ緻密ちみつなネットワークを完成かんせいすることができ演劇えんげきをもっとふかあじわえたのにともおもう。無理むりだったかもれない。中年ちゅうねんにさしかかってはじめてこれまできてきた、そしてそうとおくない将来しょうらいえる自分じぶん立位置たちいちたしかめたくなるからだ。家系かけい調しらべたくなったり先祖せんぞみずからがどのような時代じだいながれのなかせいせいいとなんできたかをりたくなる。無邪気むじゃきなままこのから退場たいじょうしたくなくなるのだ。十代じゅうだい歴史れきし興味きょうみもの気持きもちはわたしには不思議ふしぎだが、中年ちゅうねんになって歴史れきし興味きょうみたないもの気持きもちはそれ以上いじょう不思議ふしぎだ。 (藤原ふじわら正彦まさひこ週刊新潮しゅうかんしんちょう』2010ねん10がつ28にちごうによる) 途方とほうもない:とんでもない。くらべるものもない。 ヘマ:失敗しっぱい

Vocabulary (65)
Try It Out!
1
「1」驚きがあるとあるが、なぜ驚いたのか。
1. 調べれば調べるほど、歴史の新しい事実がわかってくるから
2. 自分は歴史が嫌いだと思っていたが、実は好きであることを発見したから
3. 全く別だと思っていたものの間に、思いがけない関連性が見えてくるから
4. 関連性があると思っていたものが、全く関係がないことがわかったから
2
筆者が考える「2」歴史とはどのようなものか。
1. 先祖や自分たちもかかわって作ってきたドラマ
2. 自分たちの先祖が残した完成されたドラマ
3. 自分が生きてきた時代を映したドラマ
4. 過去の人間が複雑に絡んでいるドラマ
3
筆者の気持ちに合っているものはどれか。
1. 若いうちは歴史に興味がないのに中年になって自然に興味がわいてくるのは驚きだ
2. 少しでも歴史を学べば時代の流れの中での自分の位置を知りたくなるのは当然だ
3. 中年になって歴史における自分の位置を知ろうとしない人もいることは意外だ
4. 十代のうちに歴史に関する知識のネットワークを構築しておくことが大切だ