JLPT N1 – Reading Exercise 110

#337

わたしたち人間にんげんによって悪臭あくしゅうというのは危険きけん信号しんごうひとつである。もしも、ものくさっているのに悪臭あくしゅうかんじなかったら、大丈夫だいじょうぶだとおもってべて、食中毒しょくちゅうどくこしてぬかもしれない。わたしたちは、はなという検出器けんしゅつき使つかって危険きけんがどうかの判断はんだんをしている。 悪臭あくしゅうがあるかないかは、わたしたち人間にんげん判断はんだんであって、この判断はんだんほか生物せいぶつにもそのままてはまるわけではない。くさったもの屋外おくがいすと、すぐにキンバエがあつまってくるように、くさったものはキンバエには、おそらくかおりのものとおもわれる。キンバエにとってにおいとかわるにおいとか、おいしいものとかまずいものとかという判断はんだんは、あきらかに人間にんげんとはことなる。 微生物びせいぶつなかにも、人間にんげんおなじようなものをエサにするものもいるし、人間にんげんきらうものをエサにするものもいる。まずいエサとかおいしいエサという判断はんだんは、生物せいぶつそれぞれでことなるというごく常識的じょうしきてきなことが、案外あんがい理解りかいされていないようである。このために、悪臭物あくしゅうぶつをエサにする微生物びせいぶつは、特殊とくしゅへん微生物びせいぶつだという誤解ごかいまれる。また、悪臭物あくしゅうぶつばかりあたえたのでは、微生物びせいぶつよわってしまうのではないかというようにかんがえるひとてきたりする。 ものくさると悪臭あくしゅうるが、きこで悪臭あくしゅうは、あるしゅ微生物びせいぶつには重要じゅうようなエサであって、この悪臭物あくしゅうぶつでその微生物びせいぶつそだつ。これは、日常的にちじょうてき自然界しぜんかいいとなみであり、このいとなみをにな微生物びせいぶつ自然界しぜんかいひろ分布ぶんぷしている。 物質ぶっしつ循環じゅんかんにかかわるおおくの生物せいぶつ作用さようがあってはじめて、人間にんげん生命せいめい維持いじすることができるのである。しかし、日常生活にちじょうせいかつにおいては、その一部いちぶしか認識にんしきする機会きかいがないために、自然環境しぜんかんきょうについて誤解ごかいしているひとおおいようである。このことがさまざまな環境問題かんきょうもんだい理解りかいさまたげになっているようにおもえる。 (松永まつながただし倉根くらね隆一郎りゅういちろう「おもしろい環境汚染かんきょうおせん浄化じょうかのはなし」による)

Vocabulary (48)
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1
人間にとって悪臭を感じ取ることの意味は何か。
1. 食べ物の安全性を判断できること
2. 検出器の正確さを判断できること
3. その食べ物が好みに合うかどうか判断できること
4. その食べ物を食べると死ぬかどうか判断できること
2
悪臭物をエサにする微生物が特殊で変だと誤解されるのはなぜか。
1. 微生物がなぜ悪臭物に集まるか、ということが解明されていないから
2. 微生物は常に人間とは違うものを好む、ということが認識されていないから
3. 人間と微生物では好むものの判断が異なる、ということが理解されていないから
4. 人間と微生物では持っている検出器が異なる、ということが明らかになっていない
3
その」が指す内容は次のうちのどれか。
1. 人間は臭いを感じ取ることで生命を維持できるということ
2. 人間は多くの生物の働きによって生きていられるということ
3. 自然界には悪臭を好む微生物が広く分布しているということ
4. 微生物には物が腐って発生した悪臭物がエサになるということ