JLPT N1 – Reading Exercise 90

#317

環境かんきょう高速化こうそくかしても、わたしたちの神経的しんけいてき伝達速度でんたつそくど知覚認知ちかくにんち処理時間しょりじかん変化へんかしないことから、人間にんげん一時いちじにできる認知的課題にんちてきかだいかずもそれほどわらないことが推察すいさつされる。このことは、様々さまざま情報じょうほうはいり、やりたいこと、したいこと、そして実際じっさいにできる可能性かのうせいたかまったとしても、「いち実際じっさいにできる事柄ことがらかずがそれほどえるわけではないことを示唆しさしている。 もちろん、技術革新ぎじゅつかくしんによって、ひとつの事柄ことがらをやりげるまでにようする時間じかんおおいに短縮たんしゅくされた。筆者ひっしゃ自身じしん、パーソナルコンピュータを使つかって論文ろんぶんなどをくようになって、論文ろんぶん一本いっぽんあたりにかける時間じかん労力ろうりょくはずいぶん減少げんしょうしたとおもう。とくに、原稿げんこう清書せいしょしたり作図さくずしたり、という手作業てさぎょう段階だんかいようする時間じかんはかなりった。 しかし、そうはいっても、論文ろんぶんさい論理展開ろんりてんかいをまとめるのにようする時間じかんはそれほど短縮たんしゅくされるわけではない。かんがえるためには、どうしてもそれなりの時間じかん必要ひつようだ。 (中略ちゅうりゃく人間にんげんひとつのことをやりげるにはどうしても一定いってい時間じかんがかかる。その時間じかん技術革新ぎじゅつかくしん経験けいけん学習がくしゅうによって、えた欲望よくぼうたすのに必要ひつよう時間じかん以上いじょう短縮たんしゅくされないとしたらどうするだろうか。当然、潜在的せんざいてき可能性かのうせいもとづいて肥大ひだいする欲望よくぼうのうち、実際じっさいたされるものは一部いちぶのみということになる。この場合ばあい、やりたいと、やれるはずのことは数多かずおおくあるのに、なかなかそれが実現じつげんできない「ジレンマがしょうじる。そうなると、むしろ、できる事柄ことがらすくなかったころよりも時間じかんりず、いそがしく、やりたいことができないという感覚かんかくつよくなっているかもしれない。 (一川誠いちかわまこと大人おとな時間じかんはなぜみじかいのか』による)

Vocabulary (33)
Try It Out!
1
「1」実際にできる事柄の数がそれほど増えるわけではないのはなぜか。
1. 人間は高速化した環境では考える時間があまりないから。
2. 人間が物事を認知できる速度はあまり変化しないから。
3. 人間の認知的な能力を超えた課題が増えているから。
4. 人間に与えられた時間は限られているから。
2
技術革新によって、一つの事柄の完成に要する時間はどうなったか。
1. 質の高さが求められるようになったため、完成までの時間は変わらない。
2. 考える時間は短縮されないため、完成までの時間は変わらない。
3. 様々な情報が入手しやすくなり、完成までの時間も短縮された。
4. 手作業の時間が短縮された分、完成までの時間も短縮された。
3
「2」ジレンマが生じるとあるが、なぜか。
1. 人間の欲望が増えすぎて、できることとできないことが見極められないから。
2. 人間の欲望は増えたが、欲望を満たすのは必要な時間は短くならないから。
3. 技術革新で作業効率が上がったが、しなければならないことも増えているから。
4. 技術革新の速度が速すぎて、追いつくのが難しくなっているから。