JLPT N1 – Reading Exercise 89

#316

いつでもかえってこられる場所ばしょがあるとおもっていられるのは、ずいぶんと心強こころづよいことだとおもうんです。べつかえってこなくてもいい。「かえれるところがある」とおもっているひとと、そんな場所ばしょがないひとでは、人生じんせい選択肢せんたくしかずちがう。当たり前ですけれど、「退路たいろのある」ひとほう発想はっそうがずっと自由じゆうになれる。ずっと冒険的ぼうけんてきになれる。 親子関係おやこかんけいおなじじゃないかとおもいます。10ねんほどまえ高校こうこう卒業そつぎょうしたむすめ東京とうきょうくときに、ぼくがむすめったのはふたつだけです。「かねならすぞ」と「こまったらいつでもかえっておいで」。おやどもにかってってあげられる言葉ことばはこれにきるんじゃないでしょうか。まるところがなかったら、いつだってきみのためのごはんとベッドは用意よういしてあるよ。この言葉ことばだけはおやはどんなことがあっても意地いじでもつづけないといけないとおもうんです。「そんなにあまやかすと自立じりつさまたげになる」と苦言くげんひともいますけれど、ぼくはそれはちがうとおもう。 「人間にんげんよわい」というのがぼくの人間観にんげんかん根本こんぽんなんです。だから、最優先さいゆうせん仕事しごとはどうやってそのよわ人間にんげんなぐさめ、いやし、支援しえんする安定的あんていてき確保かくほするか、です。(中略ちゅうりゃくいえは、メンバーのポテンシャルをたかめたり、競争きょうそうつためにきたえたりするためのじゃない。そういう機会きかいならいえそとにいくらでもある。 いえというのは、そとて、きずつき、力尽ちからつき、こわれてしまったメンバーがそのきずいやして、またそと元気げんき回復かいふくするためのそなえのであるべきだどぼくはおもっています。 (内田うちだたつる「ぼくのまいろん」による) これにきる:これしかない ポテンシャル:ここでは、可能性かのうせい

Vocabulary (40)
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1
帰れるところがある」と思っている人について、筆者はどのように述べているか。
1. 人生の選択肢に迷わない。
2. 人生の可能性が広がる。
3. 自分に自信が持てる。
4. 将来に不安を感じない。
2
筆者は親が子どものためにどうすればよいと考えているか。
1. いつでも助けてあげられることを伝える。
2. 「人間は弱い」ということを教える。
3. 自立の妨げになることをしない。
4. 将来お金に困らないようにする。
3
筆者は、家はどのような場であるべきだと考えているか。
1. 競争に勝つためにさらに自信をつける場
2. 社会で自立するための能力を身につける場
3. どんなときでも、穏やかな気持ちになれる場
4. つらくなったときでも、活力を取り戻せる場