JLPT N1 – Reading Exercise 37

#264

生態系せいたいけい保全ほぜんでは、そこに生息せいそくする生物せいぶつのことを考慮こうりょするが、生態系せいたいけい構成こうせいするすべての生物せいぶつひとしくあつかうことはできない。なぜなら、一部いちぶ生物せいぶつまもろうとすると、かなら不利益ふりえきこうむ生物せいぶつしょうじるからである。すなわち、われわれ人間にんげんなにをしても、それによって利益りえき生物せいぶつ不利益ふりえきけるものがしょうじることになる。そうなると、生態系せいたいけい保全ほぜんする目的もくてきで、なんらかの活動かつどうをするということは、一部いちぶ生物種せいぶつしゅ利益りえきあたえるということになる。 (中略ちゅうりゃく唯一ゆいいつわれわれがえることは、われわれが人類じんるいであるから、「地球ちきゅう生態系せいたいけい人類じんるい健全けんぜんきていくためにある」ということである。すなわち、「生態系せいたいけい人類じんるいのため」なのである。えれば、人類じんるい利益りえきあたえてくれる生態系せいたいけい保全ほぜんすべきなのである。 (花里はなざと孝幸たかゆき自然しぜんはそんなにヤワじやない一誤解いちごかいだらけの生態系せいたいけい』による) B 保全ほぜん生物学せいぶつがくかくとなる概念がいねんである生物多様性せいぶつたようせいしゅ存続そんぞくによって維持いじされる。した がって、保全ほぜん生物学せいぶつがくでは、希少種きしょうしゅ減少げんしょう過程かていにある個体群こたいぐん保全ほぜんかんする知識ちしき方法ほうほうひとつの重要じゅうよう課題かだいである。 (中略ちゅうりゃく) しかし、個別こべつしゅをそれぞれ保護ほごすることは非常ひじょう困難こんなんである。ひとつの生態系せいたいけいをとっても、微生物びせいぶつから植物しょくぶつ昆虫こんちゅう哺乳動物ほにゅうどうぶつなどおおくのしゅ生存せいぞんしているが、それらのすべての生態せいたい把握はあくして保護ほごすることは不可能ふかのうちかい。さらに、未分類みぶんるいしゅしゅ{レベル}以下いか遺伝的多様性いでんてきたようせいは、個別こべつしゅ保護ほごする方法ほうほうではぎゃく保護ほごされなくなってしまうおそれがある。そこで、多様たよう生物せいぶつ相互関係そうごかんけいふく自然しぜんをそのまま保全ほぜんすることが重要じゅうようになってくる。つまり、生態系せいたいけい保全ほぜんすることで、そこにふくまれるすべての生物せいぶつ保護ほごするというかんがえている。

Vocabulary (32)
Try It Out!
1
生態系を構成する生物の保護について、AとBの文章で共通して述べられていることは何か。
1. 多様な生物を含む自然全体を保護することが重要である。
2. 多様な生物種を一様に保護していくことは非常に難しい。
3. 生物種を分類して保護することは生物間の差別につながる。
4. 人類に利益を与える生物を保護するべきである。
2
保護すべき対象について、AとBはどのように考えているか。
1. Aは地球生態系を、Bは遺伝的多様性のある種を保護すべきだと考えている。
2. Aは生態系の全生物を、Bは希少価値のある生物を保護すべきだと考えている。
3. Aは人類に利益を与える生物種を、Bは個別の種を保護すべきだと考えている。
4. Aは人類のためにな生態系を、Bは生態系全体を保護すべきだと考えている。