JLPT N1 – Reading Exercise 23

#250

来世紀らいせいきけて、個人こじんレベルであれ地域社会ちいきしゃかい地球規模ちきゅうきぼであれ、科学技術かがくぎじゅつ進歩しんぽゆえにいっそう複雑ふくざつになっていく問題もんだいたいして、個人こじん判断はんだんしなくてはならない局面きょくめんえていくことだろう。そのとき自分じぶんなりに納得なっとくのいく判断はんだんくだすためには、科学かがく無関心むかんしん無理解むりかいめこんだりせず、ふだんかち科学かがくけ、科学的かがくてきかんがかたにふれている必要ひつようがあるだろう。つまり、「1」科学かがく社会しゃかいむすびつける良質りょうしつ情報じょうほう必要ひつようなのである。その情報じょうほう自分じぶん行動こうどう役立やくだてるために受信じゅしんするだけではなく、場合ばあいによっては、みずか責任せきにんある発信者はっしんしゃとなるために役立やくだてることも大切たいせつである。 残念ざんねんなことに、科学者かがくしゃがもたらした成果せいかは、そのままでは判断材料はんだんざいりょうとしては「2」やくたないことがおお。まず、専門用語せんもんようごゆえに科学かがくはとりつきにくい。科学かがく高度こうどになり細分化さいぶんかしたために、領域りょういきことなれば科学者かがくしゃでも理解りかい困難こんなん状況じょうきょうになってしまっている。良質りょうしつ情報じょうほうすぐれた「3」表現能力ひょうげんのうりょくをともなわなくてはならないが、実際じっさいのところ、研究けんきゅう専念せんねんしている科学者かがくしゃには時聞的じかんてき余裕よゆうがなく、そうした表現能力ひょうげんのうりょくみがくいとまもないのが普通ふつうである。 一方いっぽうで、「4」科学者かがくしゃにも良質りょうしつ情報じょうほう必要ひつようである科学者かがくしゃなにかしらあたらしいことを世界せかい先駆さきがけて発見はっけん発表はっぴょうすることに熱中ねっちゅうするものである。その結果けっか化学かがく生物せいぶつ核兵器かくへいき開発かいはつ加担かたんすることはないか、あるいはわれわれの生活せいかつないしは地球ちきゅうという生態系せいたいけいおもいもよらぬ影響えいきょうあたえることがないかにおもいをせる機会きかいは、かならずしもおおくはない。「5」こうしたてんかんして、科学者かがくしゃ外部がいぶから指摘してきされる必要ひつようがある。 「___6___」、最先端さいせんたん科学かがく研究成果けんきゅうせいかとその社会的しゃかいてき意味いみ科学かがくしたんでいないひとに、また社会的しゃかいてき意味いみについては科学者かがくしゃたいしてもあらためて説明せつめいする人材じんざい、つまり科学かがくのインタープリターが必要ひつようとなる。インタープリターは専門用語せんもんようごたんなる直訳者ちょくやくしゃではなく、問題もんだい指摘してきし、すすむべき方向ほうこう示唆しさする、科学かがく実生活じつせいかつ橋渡はしわたしをする解説かいせつ評論者ひょうろんしゃである。かれらがけるそのはしは、専門化せんもんかした科学技術かがくぎじゅつ公開こうかいして市民しみん啓蒙けいもうするという一方通行いっぽうつうこうのものであってはいけない、インタープリターには科学者かがくしゃがふだんわすれがちな社会しゃかいへの波及効果はきゅうこうか倫理的りんりてき問題もんだいほか科学技術かがくぎじゅつ学問分野がくもんぶんやとの連繋れんけい可能性かのうせいなどもするど指摘してきしてほしい。また、一般いっぱんひと科学かがくたいする素朴そぼく疑問ぎもんなかからインタープリターが斬新ざんしんかんがえをげることで、科学者かがくしゃおもいもよらぬ発想転換はっそうてんかんのヒントをられることもかんがえられる。 現在げんざいでもすぐれた作家さっか評論家ひょうろんか科学者かがくしゃ、ジャーナリストなどが先端科学せんたんかがくのインタープリターとして活躍かつやくしているが、21世紀にじゅういっせいきけてその活躍かつやくはますます期待きたいされている。 (課田かだ玲子れいこ杜会しゃかいのなかの科学かがく科学かがくにとっての社会しゃかい」『現代日本文化論げんだいにほんぶんかろん13日本人にほんじん科学かがく』による) いとま: ひま時間じかんのゆとり

Vocabulary (87)
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1
「1」科学と社会を結びっげる良質の情報が必要なのであるとあるが、この「良質の情報」とは何か。
1. 一般の人にも役に立つ科学に関する情報
2. 複雑な社会の問題に関係のある科学的情報
3. 科学者が研究のヒントにできるような情報
4. 社会に大きな影響を与える科学に関する情報
2
「2」役に立たないことが多いとあるが、筆者はどうしてそう思うのか。
1. 科学者には複雑な問題を考える時間的余裕がないから
2. 科学者がもたらした成果は社会的意昧があまりないから
3. 科学者の発表する研究成果は一般の人には理解が困難だから
4. 科学が高度になり、一般の入は科学に関心を持たなくなったから
3
「3」表現能力とあるが、ここではとんな能力のことを言うのか。
1. 科学技術の進歩にともない複雑化する問題を解説できる能力
2. 自分の研究成果が一般の人にもわかるように説明できる能力
3. 領域の違う科学者と自分たちの研究成果について話し合える能力
4. 一般の人と地域社会を結びつける優れた研究を発表できる高度な能力
4
「4」科学者にも良質の情報が必要であるとあるが、筆者はどんな情報が必要だと言っているか。
1. 自分の研究成果が、社会生活や地球環境などに、どんな影響を与えるかを示す情報
2. 自分の研究を、科学に慣れ親しんでいない入に、わかりやすく解説する方法を教える情報
3. 自分の領域とは異なる研究の成果が、自分の研究にどのような影響を与えているかを示唆する情報
4. 自分の研究に対して、領城の異なる科学者や一般の入はどんな関心を持っているかを知るたあの情報
5
「5」こうした点とあるが、どんな点か。
1. 自分の研究成果がどのような社会的意昧を持っかという点。
2. 自分と同じ研究をしている科学者がどのくらいいるかという点。
3. 自分の研究の内容や進め方に新しい発見があったかどうかという点。
4. 科学者が自分の研究成果の影響について発表したかどうかという点。
6
「___6___」に入る最も適当な言葉はどれか。
1. さらに
2. そこで
3. あるいは
4. ところが
7
筆者は、インタープリターが科学者に対してどのように働きかけることを期待しているか。
1. 科学の研究成果がどのような社会的問題を引き起こすかについて、調べるように指導すること
2. 一般の人の科学に対する疑問に答えられるように、科学者が表現能力を磨くことの重要性を訴えること
3. 作家、評論家、ジャーナリストがさらに活躍できるように、研究成果をできるだけ早く公開するよう促すこと
4. 科学者の気づかない問題点を指摘し、他分野との協力の可能性や研究のントになるような情報を提供すること