JLPT N1 – Reading Exercise 6

#233

ある有名ゆうめいなインタビューアーが、「いろんなひとわなくちゃならなくて、たいへんですね。いいひときなひとだけじゃなくて、いやなひと、きらいなひともいるでしょうに」とわれて、「いいえ、はじめからきなひと、きらいなひと、ということはありません。はじめは虚心きょしん注1ちゅういち)でそのひとうようにしています。最低限さいていげん、そのひと好意こうい関心かんしんをもつようにして」とっていたのが印象的いんしょうてきであるわたしたちは、ひといたことや、ったときの印象いんしょうで、ある程度ていど相手あいてひとがらをめてしまいがちである。 そのひと容貌ようぼう服装ふくそうやからだの特徴とくちょうや、ことばづかいや動作どうさ姿勢しせい、さらにまた、職業しょくぎょう年齢ねんれい出身しゅっしん経験けいけん社会的しゃかいてき地位ちいなどといったものからでも、どんなひとか、なにらかの先入主せんにゅうしゅ注2ちゅうに)をいだく。出会であったときの、自分じぶんがわ条件じょうけんや、その場面ばめんにもよるわけだが、そういうことをいて、冷静れいせいかんがえるひとはまれで、たいていは、自分じぶんのこれまでの体験たいけんから、あれはこういうひとだ、というイメージをつくりげる。過去かこ経験けいけんひとがいれば、そのひと印象いんしょうかさなってくる。意識的いしきてきはらいのけようとしても、この第一だいいち印象いんしょうは、つよ影響えいきょうをあとにのこす。 (中略ちゅうりゃく結婚けっこんのための見合みあいのような場合ばあい内心ないしんつよ劣等感れっとうかんっていて、きらわれるのではないかというおそれをいだいていると、相手あいてたいする見方みかたにも、バイアス(かたより)がしょうずる。畏怖いふ注3ちゅうさん)して、相手あいて実物じつぶつ以上いじょうによくえたり、ぎゃくに、反動的はんどうてきに、なにかにつけて、わるく、ひくようとしたりする。 人生じんせい、はじめての出会であいは、すべて、見合みあいみたいなものだが、がまえてコチコチになっていると、相手あいて姿すがた正確せいかくえない。とく利害りがいがからむと、バイアスがかかりやすく、かたよった先入主せんにゅうしゅいだきがちである。ずるそう、おっかなそう、きつそう……など。それは、多分たぶん自分じぶんがわ気持きもちを、相手あいてのイメージに投影とうえいしているのである。 がまえることなく、相手あいてけいれることが、いかにむずかしいか。自己防衛的じこぼうえいてきがまえは、相手あいてたいして、ドアをじようとしている姿勢しせいである。ある有名ゆうめいなインタビューアーがったように、自分じぶんこころのドアをけ、ひとせっしようとするこころがけが必要ひつようである。パッと瞬間しゅんかん印象いんしょうにとらわれたり、こだわったりすると、人間関係にんげんかんけい玄関先げんかんさきでギクシャクする(注4ちゅうよん)。 (注1ちゅういち虚心きょしん先入観せんにゅうかんなく相手あいてをありのままにけいれるこころ注2ちゅうに先入主せんにゅうしゅ先入観せんにゅうかん注3ちゅうさん畏怖いふ:おそれ (注4ちゅうよん)ギクシャク:ものうごき、ひと言動げんどう人間関係にんげんかんけい円滑えんかつでないさま

Vocabulary (50)
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1
印象的であるとあるが、何が印象的だったのか。
1. いろいろな人に会うのは大変だ、と言ったこと
2. いやな人、きらいな人もいる、と言ったこと
3. 人の好ききらいはない、と言ったこと
4. だれにでも初めは虚心で会う、と言ったこと
2
身がまえてコチコチになっている」というのは、どういうことか。
1. 作り上げたイメージを払いのけようとしている様子
2. 相手がこわそうなので、びくびくしている様子
3. 相手に対して心を開けず、自分を守ろうとしている様子
4. 相手がもっている先入観をくずそうとしている様子
3
自分側の気持ちを、相手のイメージに投影している」例として適当なものはどれか。
1. 自分に自信かないと、相手が自分をばかにしているように感じる。
2. 自分がさびしいときに相手が楽しそうにしていると腹が立つ。
3. 自信過剰な人を見ると、心配になり、注意したくなる。
4. 相手が自信がなさそうだと、自分に自信がわいてくる。
4
この文章で筆者が最も言いたいことは何か。
1. 先入観と第一印象は人を判断する時に大きく影響する。
2. 相手に対する先入観なしに自分の心を開くことが大切だ。
3. 第一印象は、その人を判断するのに、全く役にたたないものだ。
4. 人間関係は、まず相手のイメージを作りあげることから始まる。