JLPT N2 – Reading Exercise 43

#176

わたしたちの時間じかん感覚かんかくは、ひとによって、また立場たちばによってもかなりちがいます。電話でんわでよく「少々しょうしょうちください」とってたされます。3ふんたされたとしますと、ったひと感覚かんかくではその3ばい、9ふんぐらいたされたがします。このときたせたほう実際じっさいが3ふんでも、その3ふんの1の1ふんぐらいにしかかんじないのです。つまりたせたひとたされたひと時間じかん感覚かんかくは(___1___)ばいにもなるのです。そのことをよく承知しょうちしたうえで「おたせいたしました」をわないと、(2)きゃくさまを不快ふかいにさせることになります。 本来ほんらい時間じかんたいする日本人にほんじん感覚かんかくは、きわめて神経質しんけいしつだとわれます。交通機関こうつうきかんのダイヤの正確せいかくさなどにもそれがよくあらわれています。 ところが、その反面はんめん日本語にほんごなかにはきわめて曖昧あいまい時間じかんつたえることばが数多かずおおくあります。「しばらくおちください」「のちほどお電話でんわさしあげます」「まもなくくとおもいます」「少々しょうしょう時間じかんをください」などのかた日常的にちじょうてきによく使つかわれています。 応対おうたいなかで「(3)のちほどこちらからお電話でんわさしあげます」とった数人すうにんひとに、「『のちほど』というのは何分なんぷんぐらいのとき使つかいますか?」とねたことがあります。おどろいたことにこたえは千差万別せんさばんべつです。2、3ふん、10ふんか15ふん、30ふんぐらい、1時間じかん、2、3時聞じかん、そののうち、最大さいだい週間以内しゅうかんいないこたえたひともいます。そして、「のちほど」とわれた相手あいてきゃくも「のちほどって何分後なんぷんごですか」とかえひと皆無かいむちかいのです。「ではよろしくおねがいします」でわってしまいます。きゃくほうが「のちほど」を何分なんぷんぐらいと理解りかいしたかです。ったほうに(4)それだけはばがあるのですから……。 「のちほど電話でんわするとったから、かけないでってるのにかかってこないじゃないか」と苦情くじょうになったこともあります。 きちんと時間じかんのメドをひとも、もちろんいます。(5)時間じかんのメドがたないときに、「のちほど」というあいまいで便利べんりなことばを使つかうのでしょう。しかし、メドがたない場合ばあいでも、「担当たんとうがただいませきはずしておりますので、何分後なんぷんごというはっきりしたお約束やくそく出来できがねます。もうわけございません」と、はっきりえない理由りゆうをことばでつたえてください。 また、メドが場合ばあいでも、10分後ふんごおもったち「20分後ふんごぐらいまでにはお返事へんじ出来できるとおもいます」。30分後ふんごおもったら「1時間以内じかんいないには……」というように、(6)おおおおめの時間じかんつたえてください。人間にんげん心理しんりとして、「30分後ふんご」とわれても20分後ふんごぐらいからはじめます。25ふんつとイライラがはじまります。30分後ふんご正確せいかく返事へんじ出来できたとしても、あまり満足感まんぞくかんはないのです。それが「時間以内じかんいないには」とつたえておけば、30分後ふんご返事へんじがくれば「はや調しらべてくれたな」とおもって満足まんぞくしてくれるものです。 (岡部おかべ達昭たつあきこころくばりのはなしことば』による) 交通機関こうつうきかんのダイヤ:バスや電車でんしゃなどの出発しゅっぱつ到着とうちゃく時刻じこく

Vocabulary (37)
Try It Out!
1
(___1___)に入る数字はとれか。
1.
2.
3.
4.
2
(2)「お客さまを不快にさせる」とあるが、待たせた人がとんな時にそうなるのか。
1. 待たせた相手が大事なお客さまであることを知らされていない時
2. 相手が実際よりも長く待っていると感じていることがわからない時
3. 相手が電話をかけてきたのだから少しぐらい待たせても問題ないと思った時
4. どんなに待たせても「お待たせいたしました」と言えばいいと思っている時
3
(3)「のちほどこちらからお電話さしあげます」とあるが、そう言われた客は、たいてい何をすると考えられるか。
1. どのくらい待つのか確かめてから電話を切る。
2. 一度電話を切って、しばらくしてからかけ直す。
3. 電話を切って、相手からかかってくる電話を待つ。
4. 「このまま待ちます」と言って、電話を切らずに待つ。
4
(4)「それだけ幅がある」とあるが、具体的にはどれだけの幅のことを言っているのか。
1. 普通1時間以内
2. 平均すると1日
3. ほとんどの場合1週間
4. 2、3分から最大1週間まで
5
筆者は読者に(5)「時間のメドが立たない時」はどうしたらいいと言っているか。
1. あいまいなことばを使わないで、相手に何分待てるか聞いたほうがいい。
2. あいまいなことばを使わないで、正確な時間が言えない理由を伝えるといい。
3. あいまいで便利なことばを使えば、相手にはっきり時間を伝えなくてもいい。
4. あいまいなことばは便利なので使ってもいいが、その前に相手に謝ったほうがいい。
6
筆者はなぜ(6)「多め多めの時間」を使えるのがいいと言っているか。
1. 「1時間以内には」と伝えて30分後に返事がくれば、相手は満足してくれるものだから
2. 「30分後」と伝えても、相手はそんなに短い時間で返事が出来るとは思っていないから
3. 「1時間以内には」と伝えておけば、相手は2時間まではイライラせずに待ってくれるから
4. 「30分後」と伝えて、30分後にきちんと正確に返事が出来るというのは、あまりないことだから
7
この文章で筆者が最も言いたいことはどれか。
1. 待たせる人待たされる人の気持ちになってことばを決めなくてはいけない。
2. あいまいに時間を伝えることばは、時間に正確な日本人の時間感覚に合わない。
3. 相手に満足感を与えるには、できるだけ正確な時間を伝えて待ってもらうといい。
4. 人によって時間感覚の差は大きいので、お互いに待つ時間を確認する必要がある。