JLPT N1 – Reading Exercise 104

#331

理系りけい文章ぶんしょう明確めいかく目的もくてきっている場合ばあいおおいので、その目的もくてきおうじて読者どくしゃ文章ぶんしょうむ。このため、目的もくてき合致がっちした文章ぶんしょう満足感まんぞくかん読者どくしゃあたえる。たとえば、「東京都とうきょうと交通渋滞こうつうじゅうたいかんする調査報告書ちょうさほうこくしょ」はそれをりたいひとみ、その内容ないよう過不足かふそくなく記述きじゅつされていれば100ひゃく点の評価ひょうかとなる。調査内容ちょうさないよう不十分ふじゅうぶんであれば評価ひょうかがり、満足感まんぞくかんすくなくなる。 しかし、もし著者ちょしゃ読者どくしゃのあいだで、その文章ぶんしょう媒体ばいたいとして記述きじゅつされていること以上いじょう事柄ことがら発見はっけんできれば、読者どくしゃにとって最高さいこう満足感まんぞくかんとなる。えると、読者どくしゃあたらしい知識ちしき発見はっけんするよろこびを支援しえんする、あるいはそのきっかけとなる文章ぶんしょうこそが、100ひゃく以上いじょう評価ひょうかとなる。それは著者ちょしゃ読者どくしゃの「いちシナジー効果こうかふたつのものから、それらの合計ごうけい以上いじょうのものがされる効果こうか)であり、それをもたらすには、著者ちょしゃつね読者どくしゃ意識いしきし、読者どくしゃとともに問題もんだい解決かいけつにあたるという姿勢しせいつことで文章ぶんしょうみがきがかかる。 いくら仕事しごと理系りけい文章ぶんしょうだからといって「AはBだ、おぼえておけ」という姿勢しせい文章ぶんしょうでは読者どくしゃ満足感まんぞくかんすくない。むしろ、読者どくしゃ自分じぶん無知むちり、自己嫌悪じこけんおおちいり、一方いっぽう著者ちょしゃ 者への親近感しんきんかんはなくなり、がしなくなる。文章ぶんしょう目的もくてき達成たっせいするために大事だいじなことは、読者どくしゃ最後さいごまでんでくれることである。いくら素晴すばらしい内容ないようかれていても、読者どくしゃのしない文章ぶんしょう目的もくてきたすことができない。 学生がくせいのレポートで、「それが一番いちばんよくわかる。なにしろ提出数ていしゅつすうおおいので、すべてを完全かんぜん理解りかいしようとしてむことは不可能ふかのうである。結局けっきょく最初さいしょ数行すうぎょうんで、あるいは全体ぜんたい見渡みわたして、こるかどうかが評価ひょうかおおいに影響えいきょうする。これは、上司じょうし提出ていしゅつする企画書きかくしょや、コンペに応募おうぼする提案書ていあんしょなどでもまったくおなじである。 その意味いみで、ひとさそ文章ぶんしょうであるかどうかは重要じゅうようである。では、とはなにか。それこそがシナジー効果こうかである。 (中略ちゅうりゃく読者どくしゃ自力じりきあたらしいことを発見はっけんすることの支援しえんはなかなかむずかしい。むしろ、自分じぶん思考過程しこうかていふか分析ぶんせきし、読者どくしゃ一緒いっしょかんがえようという姿勢しせいつことがもっと重要じゅうようである。読者どくしゃあたえる完全かんぜん解答かいとうはなくても、解答かいとうかうひたむきな姿勢しせいしめすことができればいのだということである。えれば、ごまかしがなく、技巧ぎこうもてあそばず、おおげさにいえば著者ちょしゃ人生観じんせいかんしめすことで、真実しんじつせまろうという気持きもちが読者どくしゃつうじるのである。仕事しごと文章ぶんしょう理系りけい文章ぶんしょうは、一般いっぱんにはこういう行間ぎょうかん意味いみ不要ふようかんがえられているが、それでは無味乾燥むみかんそう教科書きょうかしょ文章ぶんしょうとなり、ひとこころとどかない。いくらひとのうとどいても、こころとどかないものはがしなくなり、結局けっきょく読者どくしゃのうにもとどかなくなる。

Vocabulary (31)
Try It Out!
1
「1」シナジー効果とあるが、読者にとってのシナジー効果とはどのようなものか。
1. 記述されている内容から、求めていた以上のことが得られる。
2. 著者が伝えようとしている事柄を理解し、知識を増やす。
3. 読むことを通して事実を知り、不十分な点を自覚する。
4. 文章から足りない知識を補い、疑問を解消する。
2
「2」それが一番よくわかるとあるが、何が一番よくわかるのか。
1. 読み手に満足感を与えるのは難しいということ
2. 素晴らしい内容でなければ読んでもらえないこと
3. 読む気がしないものは終わりまで読んでもらえないこと
4. 読んですべてを理解してもらうことは不可能だということ
3
「3」脳に届いても、心に届かないとはどういうことか。
1. 技巧には感心しても、内容には共感できない。
2. 行間の意味は理解できても、内容には感動できない。
3. 書き手の姿勢は理解できても、気迫までは感じられない。
4. 内容は理解できても、書き手の気持ちは伝わってこない。
4
理系の文章の書き手はどのような姿勢を持つべきだと筆者は述べているか。
1. 読者の読む目的を分析し、読者に過不足のない情報を与えようとする。
2. 読者を意識しつつ、真摯に解答を求めてその気持ちを伝えようとする。
3. 読者に満足感を与えるよう、妥協せずに完全な解答を提供しようとする。
4. 読者の読む気を最後まで誘うよう、読者の思考過程を深く分析しようとするぐ。