JLPT N1 – Reading Exercise 78

#305

その教授きょうじゅは、人間にんげんのうがどのような作用さようによって活性化かっせいかされるのか、という問題もんだいについてはなしすすめ、交通事故こうつうじこによってのう一部いちぶをひどく損傷そんしょうしてしまった少年しょうねん実例じつれいげた。(中略ちゅうりゃく少年しょうねんのう損傷そんしょう具合ぐあいはかなりひどいものだったので、医師いし両親りょうしんにそのむねげ、たとえ手術しゅじゅつがうまくいっても植物人間しょくぶつにんげんになることはまぬがれないと宣告せんこく。「1」そのうえ手術しゅじゅつをしたわけだが、リハビリの段階だんかい少年しょうねんたいしてできるかぎりの愛情あいじょうそそぐことを、両親りょうしんすすめたらしい。たとえたきりで反応はんのうがなくても、一日いちにちじゅうあしをさすってやり、やさしくはげましてやるようにと指示しじしたのである。両親りょうしん愚直ぐちょくなまでにこの指示しじまもり、少年しょうねん手足てあしをさすり、はげましつづけたという。「___2___」、本来ほんらいなら障害しょうがいきてしかるべきであるはずの少年しょうねんのう活発かっぱつはたらはじめ、植物人間しょくぶつにんげんどころか、退院たいいんにはジョギングをしても大丈夫だいじょうぶなほど回復かいふくしたのだそうである。 「少年しょうねん退院たいいんは、「3」まさに感動的かんどうてきでありました」と教授きょうじゅひとみうるませながらかたっていたが、この実例じつれいからかれした結論けつろん(というか仮定かていなのかもしれないが)は、人間にんげんのうは「だれかにれられる」という前提ぜんていのもとに、活発かっぱつはたらくということであった。れられるというのはどういうことかというと、これはとりもなおさずあいされるということである。ようするにあいし、あいされるという刺激しげきがなければ、人間にんげんのう活発かっぱつはたらかないし、創造性そうぞうせいたかまらないのである。 (原田はらだ宗典むねのり幸福こうふくらしきもの」集英社しゅうえいしゃによる) 活性化かっせいかする:刺激しげきあたえて、はたらきを活発かっぱつにする そのむね:その内容ないよう 愚直ぐちょくなまでに:おろかだとおもわれるほどまじめに

Vocabulary (28)
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1
「1」その上で手術をしたとはどういうことか。
1. 命は助かるがジョギングできるほど回復はしないと言ってから手術をした。
2. 脳の損傷がひどいので、助かる見込みはないと言ってから手術をした。
3. 命は助かっても寝たきりで反応がなくなることを伝えてから手術をした。
4. 脳の損傷はひどいが、手術をすれば元どおりになると約束して手術をした。
2
「___2___」に入る最も適当な言葉はどれか。
1. その場合
2. そのかわり
3. そのとき
4. その結果
3
「3」まさに感動的でありましたとあるが、何が感動的なのか。
1. 退院の日に少年がジョギングをしながら帰ったこと
2. 手術を担当した教授が話しながら瞳を潤ませたこと
3. ひどいけがだったのに手術により障害が防げたこと
4. 親の励ましによって少年が予想以上に回復したこと