JLPT N1 – Reading Exercise 56

#283

定年ていねんそなえた企業きぎょう研修けんしゅう資料しりょうにく「自分じぶん」―「仕事しごと」=?〉とあるのをて、会社かいしゃ一筋ひとすじはたらいてきたひとにはきびしい設問せつもんだなあ、と思ったことがある。 事実じじつ会社かいしゃ人間にんげんだった大阪おおさか友人ゆうじんはこの設問せつもんに「ゼロや」と苦笑くしょうして、定年後ていねんご近況きんきょうはなす。 「女房にょうぼう出掛でかけようとすると、ワシもくとうもんやから、すっかりいやがられてるよ」こういう定年ていねん亭主ていしゅを「恐怖きょうふのワシもぞく」とうのだそうだが、いまやさぞかし「ワシもぞく」がはびこっていることだろうと思いきや、ニッセイ基礎きそ研究所けんきゅうじょの「定年前ていねんまえ.定年後ていねんご」というほんにこんな調査ちょうさ結果けっかおさめられていた。 数字すうじはぶくが、仕事しごときがいをっていたひとのほうが、そうでないひとより定年後ていねんご社会しゃかい活動かつどうにもずっときがいをかんじているという内容ないようで、ようするに、会社かいしゃ人間にんげんほど定年後ていねんご意欲的いよくてきという分析ぶんせきだ。 かれらの社会しゃかい活動かつどうきがいは、交友こうゆう関係かんけいひろがりによってまれているようで、植木うえきしょく ひとになったり、NPOやボランティア、地域ちいき活動かつどうたずさわっているもと銀行員ぎんこういんをはじめ、多種たしゅ 多様たようなケースがいろいろ紹介しょうかいされている。 以前いぜん、あれは有力ゆうりょく銀行ぎんこう支店長してんちょうであったか、定年退職ていねんたいしょくした途端とたん年賀状ねんがじょう激減げきげんするなど一変いっぺんした状況じょうきょう喪失感そうしつかんおぼえ、みずかいのちったというはなしいたことがある。 これなどは極端きょくたんなケースだとしても、く「会社かいしゃ」のために頑張がんば価値観かちかんは、「社会しゃかい」のために頑張がんば価値観かちかん合致がっちするかもしれない〉と分析ぶんせきされるさき調査ちょうさ結果けっかなどは、会社かいしゃじん かんの「その」にあたらしい視点してんをもたらすものだろう。 (近藤こんどう勝重かつしげ「しあわせのトンボ:会社かいしゃ人間にんげんの『その』」2007ねん11がつ14にち 毎日まいにち新聞しんぶん夕刊ゆうかんによる)

Vocabulary (51)
Try It Out!
1
筆者の友人が、<「自分」-「仕事」=?>という設問に「ゼロや」と答えたそう だが、それはどのような意味か。
1. その友人はこれまで一つの仕事しかしてこなかったので、ほかの仕事は全然できないという意味
2. その友人は仕事一筋に生きてきたので、これからも家族と一緒に何かしようとは考えていないという意味
3. その友人は生活のすべてを仕事中心に送ってきたので、定年後は何もすることがないという意味
4. その友人は定年後に生きがいを見つけ、会社生活で得たものはゼロだったと感じているという意味
2
「1」ワシも族とは、どのような人たちのことか。
1. 奥さんが何かしようとすると、なんでも一緒にしたがる定年後の夫
2. 奥さんばかりでなく、家族の皆からも嫌がられている定年後の父親
3. 会社に出かけて行くよりも、家で奥さんと一緒にいるのが好きな夫
4. 定年退職後、自ら進んで家事や社会活動に積極的に参加したがる夫
3
「2」新しい視点をもたらすとは、どのようなことか。
1. 退職後には多種多様な仕事の選択肢があるから明るいと感じること
2. 会社中心に過ごしてきた人ほど、家での仕事に積極的になれること
3. 会社人間ほど定年後の社会活動に意欲的であるととらえられること
4. 定年後に生きがいがない人でも、社会的な活動には期待できること