JLPT N2 – Reading Exercise 24

#157

以下いかは、ある農作物のうさくもつ販売者はんばいしゃいた文章ぶんしょうである。 自分じぶん作物さくもつそだててみると、それがべられるようになるまでどれだけ手間てまがかかるのかがわかる。また天候不順てんこうふじゅんなどに見舞みまわれたら作物さくもつができないこともある。こめ野菜やさいは、工場こうじょう生産せいさんされる製品せいひんのように、自動的じどうてき安定的あんていてき生産せいさんできるものではなく、自然しぜんめぐみのなかで、ひとがかけられて自分じぶんたちの手元てもとにまでとどいているのだと実感じっかんする。 そうすると、たとえばおみせられている野菜やさい値段ねだんても、「これまでとはちがった見方みかたになってくる。」ただたんやすければいいというものではないとおもえてくる。 価格かかくというのは、現代社会げんだいしゃかいではものたいするひとつの評価基準ひょうかきじゅんである。やすいということは、それを価値かちひくいものとみなしているといえる。一所懸命いっしょけんめいつくったものに安価あんか値段ねだんがつけられてしまうと、つくとしては非常ひじょうにがっかりしてしまうことは想像そうぞうむずかしくない。 食料しょくりょうという、われわれがきていくうえでかせないものでも、ほかの品物しなものおなじように商業主義しょうぎょうしゅぎなかみ、商品しょうひんひとつとしておな土俵どひょううえきそわせることが、はたしてほんとうにいいのだろうか。われわれのいのちをつなぎ、いのちまもるものを、安価あんか競争きょうそうんでしまっていいものだろうか。 べもののつくが、いいものをつくりたいというモチベーションをうしなってしまったら、最終的さいしゅうてきこまるのはわれわれ消費者しょうひしゃなのだ。きるための対価たいか支払しはらっているとおもえば、とにかくやすければいいという安易あんい選択せんたくはできあにはずだ。 だから、ぼくがやっている「青空市場あおぞらいちば808」では、他店たてん安価あんか競争きょうそうをするつもりはまったくない。もちろん、相場そうばというものがあるので、それを参考さんこうにしているが、基本的きほんてきには生産者せいさんしゃ価格かかくめてもらい、そのうえで販売価格はんばいかかくめる。 一方いっぽう、おきゃくさんにたいしては、なぜそのような価格かかくになるのか、説明せつめいできなければならない。 どのようにしてこの作物さくもつつくられているのか。あじにはどんな特徴とくちょうがあるのか。農薬のうやく使つかっているのかどうか。 (中略ちゅうりゃくいま小売こうりりがたすべき役割やくわりおおきいとおもう。小売こうりりは生産者せいさんしゃとの信頼関係しんらいかんけいきずき、その信頼しんらい消費者しょうひしゃつたえていく。一方いっぽうで、安全あんぜん安心あんしんもとめる消費者しょうひしゃこえや、商品しょうひん評価ひょうか生産者せいさんしゃつたえていく。こうすることで、消費者しょうひしゃ農薬のうやくへの理解りかいふかまり、ひいては消費者しょうひしゃ健康けんこうらしといのちまもられていくのである。

Vocabulary (90)
Try It Out!
1
作物を育てると、「これまでとは違った見方になってくる」とあるが、なぜか。
1. 生産者の農作物に対する愛情がわかるから
2. 自然の影響の大きさや手間がかかることがわかるから
3. 農作物を作るには費用も手間もかかることがわかるから
4. 工場で作られる製品と同様に手間の多いことがわかるから
2
農作物の値段をつけるときに、筆者が最も重視しているのはどのようなことか。
1. 他店の価格と比較せずにつけること
2. 作り手の希望どおりに高くつけること
3. 作り手の希望を尊重してつけること
4. 農作物自体の品質に基づいてつけること
3
小売りが果たすべき役割として、筆者が重要だと考えていることは何か。
1. 生産者と協力して、消費者に農業の大変さを伝えること
2. 生産者が作った農作物を、適切な価格で消費者に届けること
3. 生産者と消費者の対話の機会を作り、信頼関係を築くこと
4. 生産者と消費者の声をそれぞれに伝え、相互理解を深めること