昔、京の三条にある薬屋が、家を建て直すにあたって随分大きい鬼瓦を据えました。この鬼瓦の顔は、大江山の鬼も顔負けする程の恐ろしさでした。この薬屋の向かいには、美人で気の優しい嫁さんがいましたが、鬼瓦の悪夢を見るようになりました。毎晩続く悪夢が原因で、嫁さんはとうとう病気になってしまいました。そこで、旦那が鬼瓦を降ろしてもらうようにお願いしましたが、薬屋の主人は取り合いません。この話を聞いたお医者さんが、鬼を退治してくれる鍾馗(しょうき)さんを大きな瓦で作らせて、鬼瓦の向かいに据えました。しかし、どうしたわけか嫁さんの悪夢は続き、一向に具合は良くなりませんでした。そこでお医者さんが嫁さんの悪夢の中に入ってみると、そこには酒盛りに夢中になって鬼退治をさぼっている鍾馗さんがいました。お医者さんからせかされた鍾馗さんが睨みをきかせるようになると、鬼も暴れなくなって、ようやく嫁さんの具合は良くなりました。こんな事があってから、京都では鬼瓦のある向かいの家では鍾馗さんを置くようになったそうです。